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魂柱
 バイオリンの中にひっそりと一本の細長い円柱が立っているのをご存知ですか?
それを魂柱ということを、私はつい最近知りました。そしてこの魂柱が、バイオリンの音色を決める
大事な核であることも。魂の柱、知ればまさにその通りの名前です。
 先日、川畠成道さんというバイオリニストのコンサートに、初めて行きました。
最初の曲は「シャコンヌ・ト短調」でしたが、今までに耳にしたことのない美しく崇高な音に感動しました。
 彼は八歳のときに生死をさまよう病気をして、それが原因で視覚障害となり、ほとんど何も見えません。
にもかかわらず1996年には英国王立音楽院創立175周年記念のソリストをつとめ、英国王立音楽院を主席で
卒業したそうです。さらに、同音楽院史上二人目となるスペシャル・アーティスト・ステータスの称号も授与されました。
 彼の奏でる音を聴いていると、深い悲しみと喜びの両方を体験した人の音だと思います。
なぜなら、魂の中までその音が響いてくるからです。こんなに心の深い素晴らしい日本人を現実のものとして
みることができて、熱いものがこみあげてきました。
 彼の魂の柱とバイオリンの魂の柱が一つになって、コンサート会場を自愛で包んでいるようでした。
 彼は自著の中にこう記しています。「他の人と競争するのではなく、今日、自分がやるべきことをやる。
自分との対話をずっと貫いてきた」と。自分の置かれている位置を、冷静な目で見る力と度量がなければ、
こんなことはできません。
 人も皆、自分の魂柱を生まれながらにもっているはずです。
自分の魂柱はどのようなものなのか。それを探すことと、それを自覚して自分の生き方を貫くこと。
人生はこの二つの局面でできているのではないかと思うのです。

 
vol.28 (2006年3月発行)より
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