冬のイタリアを車で旅しました。フローレンスで車をレンタルして、
トスカーナ地方の町をゆっくり見て回る計画を立てたのです。
車の旅は好きなところで止まり、時間を自由に使えることが魅力です。
気を引かれる土地には長くいて、その自然や風物を堪能できる「途中下車
だらけの旅」も可能です。
1週間の旅の中で一番感じたことは、イタリアには人間中心の街づくりが
根付いているということ。たとえば、フローレンスのような都市でも、
車がスピードを出せないように、道路が曲線になっています。
道はアスファルトで舗装されておらずすべて石畳で、車の走り心地は
悪いでしょうが、歩いていると楽しくてどんどん歩けてしまいます。
歩きながら左右に見えている建物はすべて16世紀以前のものであり、
まさに夢見心地です。
今、日本でこんな光景にお目にかかろうとすればテーマパークに
行くしかないでしょう。また日本の街の中に、こんなに歩くことが
楽しい普通の道が残っているでしょうか。日本が、テーマパークか特別に
作った遊歩道に行かないと、真に人が楽しめるシーンがないような国に
なってしまったことに、驚きと強い痛みを覚えました。
そう思いながら歩いていると、ふと「人間復興」という言葉が頭の中に
浮かびました。人間が真ん中にいる街づくり、企業づくり、政府づくり。
それを考えることが、これからの真の知性なのではないかと、そんなふうに
感じたのです。
冬のイタリアは夕日がきれいです。帰ったら、早速、高松の夕日の美しさを
確かめてみようと思いました。それを確かめられる普通の場所が、
身近にあるかどうかも確かめてみようと思いました。
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