店主の
ひとりごと
駅 | ![]() |
幼い頃、駅で列車を待った記憶は鮮明です。今はもうない噴水型のジュース販売機に 10円玉を入れて、紙コップ一杯のジュースを飲むことが至上の喜びだったこと。 飲みながら母のそばで駅を行き交う人を好奇心いっぱいに眺めていた自分。 こうした心象風景は、ささやかな幸福感といっしょに記憶の中で浄化され、琥珀色になった 写真のように心の中に残っています。 人生は駅にたとえると、今どのあたりをすぎたものだろうか、と思うことがあります。 駅は走り去る列車の通過点でもありますが、一方、列車を待つ人、乗り降りする人、 違う列車に乗り換える人などが立ち止まり、一息つく所でもあります。 私たちの生活の中に通過点でない駅を作ること、すなわち立ち止まって考えたり、 一息ついたりする時間やゆとりを持つ勇気が、今、とても大切だと感じます。 なぜなら立ち止まることは、さぼることではなくて、しっかり歩むための準備をすること なのではないかと思うからです。 二十一世紀とは自分が自分らしく生きるべき時代だと思います。 そのためには、時には駅に降り立ち、立ち止まって自分を見つめて見ましょう。 そんなひと秋にしたいものです。 |
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vol.2 (1999年9月発行)より | |
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