たかす ゆかた奮闘記
2004年の春、上方舞の第一人者 吉村ゆきその師匠が、「日本の心を伝えたい」という思いから、
屋島小学校の総合学習授業として、5年生に舞を指導されることになりました。
それにあたって、揃いのゆかたを作り、88人全員にプレゼントしましょうというお気持ちの入れ様。
そこでたかすでは、そのお手伝いをさせていただくことになったのです。
■お揃いの浴衣はまず図案から
ゆきその師匠のご希望は、
「『八島の舞』にちなみ、裾に波、肩から袖にかけて屋島の山を描いた絵羽ゆかたにしたい」というもの。
そこで図案集から選んだイメージに合った波の図案と、屋島のイラストと写真資料を絵師さんに送り、
図柄を起こしてもらうことからスタートしました。たかすでも初めての試みに不安もありましたが、
幸い出来上がった下絵は、「子供ゆかたでも格調のあるものに」という、
ゆきその師匠のご要望に適い、「イメージどおりにシンプルでとても良いわ」とのお誉めの言葉を頂いたのです。
■苦労した寸法決め
さて、次は仕上がり寸法の設定です。小学5年生の身長の幅は、130cm〜160cmと大きく、また男女で着方が違うので、
どういう寸法にすれば良いかで大いに悩みました。
担任の先生にお願いして一人一人採寸して頂いたデータとにらっめっこしながら、最終的には男子6サイズ、
女子12サイズの寸法設定をし、なおかつ、1年に5〜10cmの身長の伸びにも対応できるように仕立て方を工夫しました。
2月末、メーカーにお願いしてあった反物が染め上がりました。早速その反物を仕様書を書き添えて縫製に出しましたが、
出来上がるまでは「あれで寸法設定はよかったかしら」、「縫い方の指示は正しかったかしら」と心配で堪りませんでした。
4月1日、完成品が店に届きました。どきどきしながら梱包を解き、ゆかたを広げてみますと、濃紺の屋島の山並みと波が、
白い地にくっきりと映えた、なかなか素晴らしい出来上がりです。ひとまず、ほっと胸を撫で下ろしました。
■88人のまぶしいゆかた姿
4月21日、開講式当日。ゆきその師匠をはじめ、担任の先生方、前校長先生、教頭先生、各クラスの代表児童が
お揃いのゆかた姿を披露。大人っぽい凛としたゆかたを身に着けた子供たちが、少し緊張しながら、
きらきらと瞳を輝かせている姿は、とても感動的なものでした。
その後の貸与式で、次の5年生に引継ぎ伝えられるよう大切に着てくださいとの思いも込めて、
ゆかた、帯、舞扇がゆきその師匠より、一人一人に手渡されたのでした。
4月26日の初稽古では、お母様や地域の方のお手伝いのお陰で、全員がゆかたを着て勢揃い。
実は限られた時間の中、少しでもお稽古の時間を取ろうと、ご厚意の方々の手を借りて、着付けがスムーズに進められ、無事に着せつけを済ませることが出来たのでした。
全員の着姿を見て、大きなトラブルがないことを確認し、「あ〜、良かった!」と、やっと肩の荷を降ろしたのでした。
こうしてたかすの初の試みは、私共の未熟な部分をしっかり支えて下さった周囲の方々や、
浜松の浴衣メーカーさんの力強いサポートで、無事にゴールまで辿り着く事が出来ました。
けれども、「八島」のプロジェクトは、まだまだ始まったばかりです。屋島小学校の担当の先生方のご尽力とたいへんさ、
また、次の年、その次の年と続けていけるようにとのゆきその師匠の意気込みの為にも、まだまだ多くの方のご支援を必要としており、たかすとしても出来る限りの協力を続けさせて頂きたいと思っています。
最後になりましたが、このように素晴らしい経験をさせて下さったゆきその師匠、また、このプロジェクトを影で支えて下さっている多くの方に幾重にも感謝の言葉を奉げたいと思います。ほんとうに有難うございました。
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