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対談この人と
話そう...

2010年12月発行(vol.47)



たかす文庫 「この人と話そう…」

絓引き染め友禅師
山中 政次郎 さん

 
やまなか せいじろう さん
明治44年(1911年)京都市生まれ
絓引き80年の第一人者
平成12年黄綬褒章受賞

聞き手・蓮井 将宏(や和らぎ たかす 店主)

明治四十四年生まれ、今年九十九になられる絓引き職人、山中政次郎さんにお会いしてきました。私の周りには、このお年で今なお現役で働いている人はいません。お話の間、ユーモアを交え、楽しく人生を振り返って頂きました。人間にとっていかに好奇心が大切であるか、というプロとしての心構えをさりげなく教えて頂きました。生涯、一つの仕事に打ち込む凄さと美しさに感動した時間でした。


友禅「絓引き」(しけびき)

「絓引き」は大正時代に発明された友禅染の一技法。
専門の職人は少ない。絓(しけ)とは、繭の外皮から引き出した
あら糸のこと。「絓引き」は、筆を使わず、専用の刷毛を用い、
職人がフリーハンドで線を引き、絓糸を織り込んだような細い線状の
模様を描く。縦縞、曲線、かすみ、よろけなど色々な技法がある。


九十九歳の挑戦

山中政次郎さんの生家は祇園で自転車用の油屋を営んでいたという。知人の勧めで15歳の時、中京区の親方に弟子入りした。25歳で独立。以来、絓引き一筋に80余年-――。途中、太平洋戦争があった。出身地によって編成されることが多かったかつての軍隊では、部隊毎にその地方の特色があったと言われている。九州や仙台の兵隊は勇猛で知られた一方、関西人の部隊は合理的な地域性が由来してか、弱いと見られた。召集され海軍に所属した山中さんは当時を振り返る。

「日本の兵隊で強いのは薩摩か仙台。気が荒い海軍では京都の人間なんか相手にされしまへん。敵の前で進めと言われたら九州の連中は立っていく。けど、京都の人間は這うていくんやから。それでも目が良かったから『見張りだけさしたるわ』言われましてなぁ。水平線にかすかに浮かぶ敵の船の先を真っ先に見つけなあかんのやから。」

絓引きは、刷毛の継ぎ目の跡が残るようでは一人前になれない。織り柄のように途切れのない線に見えても、実は何度も手を止めているし、そのつど、色をついでいる。フリーハンドでやり直しは効かない。根気と集中力のいる技である。だからその〝目の良さ〟を買われたのだ、と山中さんは言う。それは誇りでもある。

10年間の修行時代。3年間は生地を触ることを許されず、板の上に水で描いたり、新聞紙に線を引いたりして練習した。親方に怒鳴られる毎日だったが、それが良かった。

「身についたものはなくなりません。いっぺん身についたら、なんちゅうこともないし、この年になっても関係ない。それから、どこのだれでも構へん。厳しく教えてもらわなあかんなぁ。」


  一反(12m)に一筋の線を、どこにも途切れがない様に引いてゆくことは
大変な仕事です。これこそ山中さんの真骨頂ですね。


絓引き職人は数少ない。それも他の技法との兼業が多い。着物業界が低迷している現代では、伝統にも変化が求められる。

「なんぼ長く続けても時節についていけなあかん。職人も変わらなあきまへん。」

山中さんは10年間、日本画を習い、色のバランスを学んだ。下絵も自分で描くし、刷毛も自ら手を加えて工夫するという。

「刷毛は鹿の毛が一番よろしい。羊はあきまへんで。鹿は硬さとコシがあってしゃんとしとる。イタチの毛もよろしいな。ねばりがある。」

99になる今でも時間があれば、展覧会などに行き、新鮮な目で色々な工芸品や絵画を見て来ると言う。新聞の写真や広告を仕事場の壁に貼り付けて参考にすることもある。

「もう十分、と思うことはありませんか?」と問うと

「全然ないな。なんぼでも研究でなあかん。」

と答えられた。自分一人の頭だけでは、たかが知れているのだから、他の人の作品を見て勉強しなければ、と。広く物を見て、世界から学ぶ。山中さんは、常に自分の特技、特徴を活かす事を考え、発展する道を己で探して来られたように思う。

「見張りも染め物の技見るのと一緒や。染め物の陳列が50反あったら、丸々見るようではあかん、50反のうち、ええのを5反だけみたらええ。」

と教えてくれたのは海軍時代の上官。
「ええこと言うてくれましたわ」と、山中さんは笑った。


日々の生活の中で、問題意識を持ちつつ、生きてゆくことがいかに大切であるかと、山中さんより教わりました。山中さんの絓引きの作品に見る、まっすぐな線を引き続ける凄さ、どこで切れているのか分からない一筋の線の伸びやかさに、改めて人生の重みを感じます。



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