対談この人と
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2010年9月発行(vol.46) |
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たかす文庫 ーギャラリーen 10月の企画展よりー 伊藤 正 さんを訪ねて |
伊藤 正 作陶展 2010年10月28日(木)~11月10日(水) |
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陶芸家 いとう ただし 1952年岩手県生まれ。東京都立大学で自然地理学を専攻するが、 理想と現実のギャップに悩み、中退。 インドへの放浪旅行の中で、モノ作り仕事に目覚める。 強く影響を受けたのは、20世紀陶芸界の鬼才である故加守田 章二。 彼の炻器に触発される。2008年、第2回智美術館大賞優秀賞受賞。 |
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初めて個展を開く作家さんのアトリエにお邪魔するのも、小生の大事な仕事(楽しみ?)のひとつです。
岩手県遠野地方にお住まいの伊藤さんを訪ねたのは、東北はまだ雪深い3月のことでした。 実際にお会いすると、伊藤さんの人柄は、作品と同様に「朴訥」、そのもの。遠野の地を愛し、 モーツアルトを愛し、仕事を愛している人です。今回は、その時の様子を写真とともにご紹介いたします。 |
2010年3月、伊藤さんのご自宅。納屋が仕事場です。 宮沢賢治の生誕地・岩手県花巻市にひっそりと佇んでいます。 江戸時代の古民家です。香川県ではあまり見かけませんね。 |
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縄文時代の土器を嬉しそうに見せてくれる伊藤さん。自分で土を掘り、 土器を集めるのが大好き。まるで子供のようです。この笑顔、最高ですね。 現代人が一番忘れている表情です。(笑門来福) |
【縁~えにし~】
最初に伊藤正氏の作品を拝見したのは、銀座にあったギャラリー無境でのこと。これは焼きものなのかと思わず唸りました。硬く焼きしめられ、風雨に晒された岩肌を思わせる作品の数々…、今までに見たことがないもの―遠い過去に見たもの―に巡り合ったような感動。ひとえに、引き合わせてくださったオーナー塚田晴可さんのお蔭、と深く感謝しました。 その塚田さんのご協力のもと、我がギャラリーenにて「無境の世界展」を開いたのが去年の10月。伊藤さんの作品も少し発表して頂き、多くの方々と感動を共にすることが出来ました。しかし、その約1ヵ月ほど後、塚田さんの急逝の知らせを聞き、小生は言葉をなくしました。 伊藤さんの個展を開こうと決めたのは去年の暮れのことでした。開催日は塚田さんの命日に合わせよう、それから塚田さんが大好きだった栗林公園掬月亭にて東儀雅美さんの演奏会を催し、そして伊藤さんの花器に花を活けよう…と。 皆様、ぜひ静かな時間を個展にてお過ごしください。 店主 |
玄関先の風景 大きな木の台の上に 置かれたオブジェと作品達。 バックには望月通陽さんの 型絵がさりげなく… |
←仕事場の暖炉…年代ものです。 とても良く働くようで小生が伺った 雪深い時でも部屋の中は驚くほど 暖かでした。仕事場は無秩序の秩序…。 伊藤さんにしか分からない空間です。 不思議。 |
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↑母屋の中で… 伊藤さん「こっちのほうが寒いですよ」 小生「いいですよ。見せてください」 伊藤さん「そうですか」 小生「本当ですね。火鉢ひとつですか」 伊藤さん「そうです」 小生「伊藤さんの作品、楽しそうですね」 伊藤さん「家と調和してますか?」 こんな会話がず~っと続きました。 |
←雪明りの中でモーツァルトを聞きながら、 ひたすら静に穏やかな自分のリズムで。 最高に幸福な時間を刻みながら一日が過ぎてゆく。 |
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伊藤さんのスケッチ『貝殻』→ 自分で集めた貝をじっくり見て描いていくそうです。 都立大学で自然地理学を学んだ事が 今とても役立っているとか。 小生の大好きな花器は この貝殻のモチーフから出来上がったものです。 |
←ガス窯 伊藤さん手作りの窯。何回も作り直して今のようになったとの事。 伊藤さんの作品を見ると、陶芸に詳しい人ほど、どうやって焼くのか不思議になるようです。普通は決して完成しないであろう 美しい形です。それを可能にしているのが伊藤さんの技術です。 自然の中に生きている真善美の世界を一生かけて追いかけていく 伊藤さんの姿に憧れと郷愁を感じた旅でした。 |
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