対談この人と
話そう...
たかす文庫 「この人と話そう…」 聞き手・蓮井 将宏(や和らぎ たかす 店主) |
京都 型染め工房『つつ井』
筒井 章男さん |
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京都の型染め工房『つつ井』さんは、いつも何か新しいものに挑戦している、今、注目の創り手さんです。
奇を衒わず、慣れ過ぎず、はっと感動するような着物や帯を創り続けています。 今回はその筒井章男さんと奥様と一緒に、筒井さんの実家である長野県飯田市の工房にお邪魔してきました。 そこは創業115年の染め屋さん。信州飯田藩の城下町だった現在の飯田市は、南信州の小京都と言われ、 伝統芸能が盛んです。しかし以前は50件もあったという染め屋さんも今は2件ほどになり、ある日、突然 途絶えてしまう技術がある、そんな時代です。 |
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● 自然の色
今はもう廃業されましたが、ひと昔前は創作小紋で有名だった『珍粋』で、以前お仕事をしていたんですよね。 その時のことで何かありますか? 「当時は色作りが難しかったですね。前の社長に、自然の色じゃない、と言われたことがあります。反物を全体的に見た時に、まとまってないだろ、と。それが衝撃的でした。といっても一度きりでしたけどね、教わったのは。色だし、配色が基本で、それが出来ないと何にもならないのです。どうしても出来ない人は、最初ばらばらに色を出して、最後に一色を全体にかけると、落ち着くという方法もありました。」 |
<着尺の色さし>
番号順に色を置いてゆくと美しいきものが出来ます。一番大切なところです。 この仕事を筒井さんは知恵を出し考え、図案を起こし動きのある着物を創作してゆきます。 |
● いつも新しいものに挑戦している その時の経験が、今の基本になっているわけですね。それにしても筒井さんはいつも新しいものを創っていますね。先日、水玉のグラデーションの小紋を見た時、感動しましたよ。 「必ず、何か新しいものをどこかに入れたいんです。伝統は伝統で守らないといけないんだけど、それだけでは先がない。好きなんでしょうね。例えば街を歩いていても、街並みの中に、なにか参考になるものはないか探していて、図案に活かそうと思っていつも見ています。何か気になる物があるとそれを記憶しておいて、図案を作る時にそれが出てくるんです。この間、江戸小紋の新しいものを作ろう、という時も苦しみました。もうやりつくされていますからね、新しいものなんか作れっこないぞ、と。考えて考えて、ふと、今までのものを崩したらどうか、と思いついたんです。江戸小紋を土台に単色で柄物にしたらどうか、と。ちょっと動きを持たせると、今の感覚になってくるんですよ。それがあの小紋になりました。」 |
染める道具
イタチの毛で作られています。今では貴重なものです。 |
筒井さんご夫妻(ご実家にて) とても素敵なお二人です。 お仕合せな微笑み、有り難うございます。 |
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