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店主の
ひとりごと

犬走り

 皆さんは「犬走り」をご存知でしょうか。寺院などでは雨どいをつけず、
雨が落ちるところに小石などを置いた溝を作り、排水するようにします。
その溝のことを「犬走り」と言うのです。
 ある春の早朝のお話です。
 実は、私は今年になってからあるお寺で、座禅を組ませていただきました。
その座禅の日にあたる朝に雨が降りました。私は、外でしきりと雨の降る
音がするなか、座禅を組み始めなました。
 最初はなかなか集中できなかったのですが、やがて心が落ち着いて
くると、軒から落ちる雨の音ひとつひとつがはっきりと聞き分けられるように
なってきました。すると突然、まるで自分が雨の只中に溶け込んで
居るような錯覚を覚えたのです。雨と自分がひとつになって過ごす静謐な
時間。それは言葉では表現できない心地よさでした。
禅が教える「一念無想」とは、まさにこのことなのだろうと感じ入りました。
座禅が終わってから、私はこの雨の音の不思議について改めて確かめて
みました。すると先述の「犬走り」の存在に気づいたのです。
 軒から落ちた雨が犬走りの小石にあたって生まれた「雨の音」が、
お堂の中へ運ばれていました。「犬走り」が下界と室内、自然と人を
ひとつに結んでいたのです。そこには「対峙」ではなく「融合」の思想が
見事に現出していました。
 知らぬ間に「対立」の構図を消し去ってしまう日本文化の素晴らしさと
やさしさに気づいた私は、軒から落ちる雨滴を受け止めて犬走りが
涼しげな音を立てている光景に、思わず頭を下げたのでした。
 それは、忘れられない春の朝となりました。

 

vol.17 (2003年6月発行)より
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