対談この人と
話そう...
2008年9月発行(vol.38) |
たかす文庫 「この人と話そう…」 染織家 芝崎 重一さん 聞き手・蓮井 将宏(や和らぎ たかす 店主) |
●着物への想い |
今から60年前のおがみ糸。 |
藍をたてる。温度調節のため、 |
座繰り糸。ふんわりとしなやか。 |
椿などの灰の溶液に麻袋に入れた |
炭の灰汁(あく)。アルカリ性の濃度によって |
精錬前後。 |
「一番大事なのは糸」 芝崎:今の糸は、着物の糸じゃなくなったんだいね。 蓮井:着物に適していないということですか、日本の絹糸は。 芝崎:そう。明治になって大きな工場作って、大量に絹糸を生産して輸出して。 日本の経済を支えたわけでしょ。それは輸出用の糸だね。少ない繭の量で たくさん出来るように、ぎゅっと引っ張って細い糸を作ったわけだいね。 それを輸入して、ヨーロッパや米国が何を作ったかっていえば、着物じゃないよ。 だから根本的には違うわけだね。着物はそれ着て、暑さ寒さをしのがなくちゃならないでしょ。 だから座繰り糸みたいに糸を引っ張り過ぎないで、繭を多く使って、本来絹糸が持つ空気層が そのまま残るような糸が、一番合ってる。しかもそういう糸は軽いんだよ。 空気が入ってるからね。江戸時代のもので残ってるものは、みんなそうだ。 蓮井:芝崎さんの糸を初めて見た時は本当に感動しましたよ。輝いていて、羽のように軽い。 芝崎:今の人は、みんな同じ紡績工場の糸を使って織ってる。みんな同じ風合いでしょ。だから色柄で 勝負しているけど、そうじゃない、着物は着るものなんだから、着て、着やすくないと。 蓮井:陶芸家はその肌合いの為に土から自分でブレンドするわけですしね。 なるほど、芝崎さんがいつも若い人に自分の糸を作れと言っているのがわかりましたよ。 芝崎:自分の糸じゃないと個性がないでしょ。たくさんの着物がある中で、お客さんは良い品を 選びたいと思ってる。だから、糸が一番大事なんだよ。決して人まかせにできない。 素材の性質を知りぬき、どれだけ絹糸の良さを活かした 織物を織ることが出来るか、そこに一番神経と手間ひまをかける。それが芝崎さんの信念。 |
かせに巻かれた色とりどりの糸たち。 | 桜と椿の木の皮。内側に色素あり。 | この機織機から多くの傑作が 産み出される。 |
糸の棚。 | 仕事場にて。芝崎さんと息子さん。 |
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「 秋のや和らぎ展 」 平成20年9月22日(月)〜26日(金) ※芝崎重一さんと、たかすの和の世界をお届けします。 是非、芝崎さんの作品を直にご覧下さい。 |
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