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対談この人と
話そう...

たかす文庫「この人と話そう…」
ROOTS BOOKS 代表

小西 智都子さん
聞き手 蓮井将宏(や和らぎたかす店主)

<小西さんに寄せて>
いつも自転車に乗って高松の町を走る姿に、「じゃりん子チエ」ちゃんか「魔女の宅急便」の少女を重ねていました(小西さんゴメンね)。頑張り屋さんの彼女が創る本は本気です。底知れぬ情熱を感じます。
今回はこんな女性が高松にいる事を紹介したくて取材させて頂きました。本当のやさしさとは多角的に物を見つめる心から生まれると思います。そんな事を気づかせてくれる「せとうち暮らし」です。いつまでも応援していますよ、小西さん。

○世界との「つながり」

小西:私は小学校中学校とずっとブラスバンドをやっていたので子供の頃は音楽の道に進みたかったんですが、父に言われたんです、一番好きなものは趣味に残しておきなさいって。そこで違う道を選び直し、大学で香川を出て、西宮で一人暮らしをしました。卒業しても香川に戻ってくるつもりは全然なくて。日本語教師になって海外で働きたかったんです。でも卒業論文を出した三日後にあの阪神淡路大震災(1995.1.17 5:46)があって。住んでいた古いマンションもぺちゃんこになりました。

蓮井:その時は寝ていたんですか?

小西:少し前に夢で起こされて起きてたんですよ。それですぐに外に逃げようとしたんですけど部屋の前が一メートルくらい陥没してて、水道管は破裂してるし、エレベーターも崩れて使えないし。非常階段でなんとか下りて外に逃げました。

蓮井:非常な体験されたんですね。

小西:その後苦しんだことがあって、…ホームシックになったんですよ。震災の後、大阪経由で高松に帰ってきても、西宮に戻りたくてしょうがないんです。それで、下宿がまだ残っている友達のところに泊めてもらいながら、二週間行っては高松に戻り、また二週間行って、と、ずっとあっちにしがみついてたんですね。大学四年間を過ごした西宮という土地が大好きで。でも身の回りのものを、突然、全部なくしたわけです。そうすると、自分が認識している自己というものは、物に支えられているっていうことがよく分かって。例えば普段の見慣れた景色とかお気に入りのお茶碗とか好きで買った洋服とか…。生きていく中で必要なものは当然新しく揃えるんですけど、気が付いたら前使っていたのを同じものを探してしまう。

蓮井:ひとは、ものによって世界と繋がっているんですかね。

小西:はい。どのくらい、人間のアイデンティティは環境と身の回りの物に支えられているか、ということを実感しました。そしてもっとつらかったのは、一度失えば、元のものはもうないということ。次にあるものは別の物になっているから。そこで完全に分断されてしまった、いきなり「とりあげられた」感があって。
それではじめて、生活していく場所とか自分達の住む環境とかにも関心が向いて。それまで全く関心がなかったんですけど(笑)



○瀬戸内の「営み」

蓮井:せとうち暮らしを作ることになったきっかけは?

小西:地域情報誌でエディトリアルデザインの仕事に携わっていた時に、県の移住交流促進事業の依頼を受けたんです。平成十九年ですから今から八年前ですね。それで、香川で移住するんだったら島と瀬戸内海を売りにすべし、と。じゃあ、とにかく島に行ってみよう、と。で、働き世代の人たちをターゲットに島の暮らしを紹介するのが良いんじゃない?ということになって。小さなフリーペーパーから始まったんですよ。移住交流の調査をやりながらですから創刊したのは平成二十二年で、正味は四年ですけど。

蓮井:先日頂いたお手紙に、「瀬戸内をなぜ伝えたいのか、何を伝えたいのか、自分の中の漠然としたものがようやくクリアになりつつあります」と書いてくれていましたね。
今回の「せとうち暮らし」最新号(14号)では「冬を味わう島ごはん」と題してレモン、オリーブ、牡蠣をテーマにしていますが、表紙の裏にはこう書かれています。「限られた土地でいかに皆のお腹を満たすか。」「今回取り上げる3つの食材は、そうやって島の先人たちが知恵と工夫で根づかせた食べ物です。そこに共通するのは人と自然が共栄するところに、豊かな実りがもたらされるということ。」こういうところに小西さんの想いを感じます。でもこの言葉は日本という国の縮図でもありますよね。かつてそうであって、或いは、本来そうであるべきの。

小西:瀬戸内は内海で、そこにある島は小さなものですけど、疑いもなく海で外の世界と繋がっているんですよね。そして島の人達っていうのは世の中でいうと遅れている地域の人達かもしれないですけど、戦後の中央集権の枠に組み込まれていない、幸いにも(?)東京中心という発想の中にないんですね。なので、彼らは常に自分たちの島を中心として、自分の力で何が出来るかと考えている。私が自分の仕事としてこれから残して伝えていきたいのは、そういうしなやかで自由な、瀬戸内の「営み」なんだと感じています。

蓮井:自由といえば、前号の13号では和田竜さんの「村上海賊の娘」でも有名になった村上水軍、瀬戸内海を舞台に跋扈した海賊がテーマでしたね。僕が思うに、一番大事なのは変化し続けられることです。時流によって、でも魂は変わらずに、ね。そして魂を磨く為には生き残っていかないといけない。変化しつづけられないと残っていけないから。こういう言葉があります。「伝統とは勝ち続けること」だ、と。

小西:それから、島の人が自由なのは、一つには、自分の世界が見えるからということがありますね。このままだと食べられなくなるのがわかるから(笑)ある意味シビアなんですね。

蓮井:刻々と変わる潮流を読んで舵を取れないと、海を渡っていけませんからね。


○We love living here

蓮井:では、小西さんのこれからの夢は?

小西:瀬戸内海の海開きですね。海外とのコミュニケーションをもう一度復活させたい。

蓮井:古代から瀬戸内海では海洋交易が行われていたそうですからね。

小西:はい。去年一年、海賊をテーマに学んだ中で、この人たちは身一つでもへっちゃらで生きていける、心配をしない人たちだ、と感じました。同じような感覚を、現代の島の人たちにも感じます。それから島の人と話しているともっと自分の土地を愛するということを表現してもいいんだ、と強く思わせられます。自分の中の、住む土地に対する執着することで大事な何かにつながるような。島が大好きだし、そこでの暮らしに満たされている、今はほんとにそう感じています。





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