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店主の
ひとりごと

パリ紀行

令和元年6月、念願のパリで個展を開くことができました。
1週間程の会期を通じて感じたことをお伝えしたいと思います。


【 パリで知りたかったこと 】


月並みな表現かもしれませんが、パリはとても美しい街です。
セーヌ川を挟んで美術館をはじめとする石造りの古い建物が並び、今も使われています。
ゆっくり歩くのが楽しく、いくら歩いても不思議と疲れを感じません。
これは石という素材に対する無意識な安心感から生まれるものではないかと思っていました。
そんな街で着物の展示会を催す事は永年の夢でした。
パリの人々が現代もつくり続けられている伝統衣装である着物についてどのように感じるのだろうか、
体感してみたかったのです。
そこで自分が今、最高の職人だと思う人たちと一緒に創った着物をもって
パリに乗り込んでみることにしたのでした。


【 感じ、知る 】


展覧会を開くことになった会場では茶道や香道の教室も開かれていて、
パリ在住の日本人だけではなく、フランス人もそれらを真剣に学んでいます。
彼らを見ていて思ったのは

「本物を学びたいと切に願っている」

ということでした。
中には日本語で夏目漱石などを読んでいるフランス人もいて、本当に驚きました。
やはりたまには日本を離れることも大事だと感じる出来事でした。

かつて浮世絵がジャポニズムとしてフランスをはじめヨーロッパに拡がったように
本質的なことがらは、国を超えるものだということも感じました。

会場を訪れた人に

「これはどの様に創られているの?」
「素材は何?」
「どの様に織るの?」
「いつ頃着るの?」
「この紋様の意味は?」

など色々なことを聞かれました。
それらの質問に対してシンプルに丁寧に答えると、人々の着物を見る目は輝きを増します。
そしてより興味を深めてくれるのでした。
このことから、感性と理論の両方からコンタクトできてこそ、
人の興味と知性を刺激し、満足を与えられるのだと教えてもらった日々でした。






【 これでいいのだ(個性と寛容) 】


パリに在住している人たちにパリの良さについて聞くと

「あまり人の目を気にしないところ」
「無駄に干渉してこないところ」

という答えが返ってきました。
それを聞いて、特に前者の「あまり人の目を気にしない」
という点が、日本人と大きく異なる点だと思いました。
自分の人生に対して責任をもって行動し、学生も授業料のことでデモをする国です。
そうした要求の一方で、自立するためには正しい諦めも必要です。それらを含めて
「いつまでも大人にならず人に頼る小人のままでは世界に伍していけない」
という考え方で自立性を重んじる国民性は、日本人も見習うべきでしょう。

小さなお店にもそのお店のオーナーの哲学が感じられ、そぞろ歩きは楽しいものでした。
日本もかつて個性ある専門店が街の彩りになっていましたが、
昨今は金太郎飴のように全国同じ店が軒を並べて街の風景を作っているように思えます。
我が道をゆく、つまり自分の生き方に責任を持つ。
国民性にせよ、店のありようにせよ、パリの街を歩いていて、
現代の日本に欠けている点はこれなのではないかと思いました。
我が道をゆく人を認めて応援する。
それが寛容の精神に繋がっているのではないでしょうか。

「これでいいのだ」と自分のことを思い、
「それでいいのよ」と他人のことを受け入れる。

これは着物の世界にも繋がる在りようだと、パリの街に置かれた着物を見て、なぜかそう感じました。


【 人は文化の船 】


世界中の人々がお互いの文化を尊重し合う時代こそが平和をもたらしますね。
そのためには日本人各々が今後日本の文化をしっかり見直し、身につける事が求められます。
まさに日本の価値が問われる時ですね。

人はそれぞれ自国の文化を載せて運び、伝えることができる船です。
自国の文化を身につけた私たちが世界を巡れば、しあわせな世の中が訪れると思います。
言い換えれば、日本人が自国に目覚めて、日本人として行動することが、
平和への一番の近道となるのではと考えます。
そしてどんな時も「和」と「ユーモア」を大切にして暮らしたいものです。


【 物の在りよう 】



パリで出会った人や風景。
それはかけがえのない経験でした。日常で出会う人こそ一期一会で尊いものです。
全て有限の世界ですが、その中に無限を感じつつ生きるということが
日々を真っ当で尊いものにしてくれます。

今回のパリの個展を通して、そんな暮らし方や日々をおくる助けになるものを提案したいと、
今まで以上に思うようになりました。
提案、提供させて頂くものは、単なる物ではなく、
そこに使い手独自のストーリーが新たに生まれる物にしたいのです。
物の価値はそのストーリーの中で創られます。この様な考え方こそが
日本が培った美しい暮らし、美しいもてなしではなかったでしょうか。
そんな暮らしを見たいと、外国人は思っているのではないかと私は考えます。
決して、高価な日本美術品で飾り立てられた和の空間や
暮らしぶりを見たいと思っているわけでは在りません。


【 プレゼント 】


ある日、パリの夜明けをセーヌ川沿いに歩いたとき、
美しい街、美しい暮らし、そして美しい人とは何かを感じました。

過去はヒストリー、未来はミステリー、現代はプレゼントと書きます。
今回のパリ展で、私はたくさんのプレゼントをもらいました。
だからこそ今この時を神様より頂いた時間、過去に感謝し、
明るい豊かな未来を創りたいと思っています。
合掌




 vol.82(2019年9月発行)より
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